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りゅーていの小部屋

よろずなことをつらつらと。

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アカデミーシリーズ。

<キャスト>
リョウ:孔雀色の目/普通学科生徒だが、他学科への転属を志望中
ミーセム:金髪/紫の目/高次法理士科生徒。口調が軽い
レニック:金髪碧眼/予備兵科生徒。おとなしめの性格

色々な設定を修正中なのもあってあまり書いていませんが、まぁ読めるとは思われ。
<Red Alert>




「第一級緊急警戒発令を要請する──」

 携帯端末に向かって叫ぶ声はかすかに震えた。

〈状況確認──発令要請を受理〉

 要請が承認されれば、生存率は上がる。ほんの慰め程度に。

〈緊急警戒発令──貴官の特務権限を承認〉

 だが、何の覚悟のできていない人間に命を託すよりはずっとマシだ。

〈指示を願います──リョウ・N・ヴォード特務士官〉

 自分には、覚悟がある。

「──聞こえるか」




   Academy -RED ALERT-




 『世界の半分が消えた日。

 大きく姿を変えざるを得なかった世界。
漠然とした「滅び」と「死」が形となって目の前に現れた。
急速に統合化と簡素化が進み、あらゆる世界の構造が解体・再構築された。
 それこそ、国家から家族の在り方にいたるまでのあらゆる構造が、である。
 

 そのようにして、人類は世界規模の有史以来最上の危機を乗り越えたのだ』


「──ばッかばかしい」

 リョウは吐き捨てる。ついで引き千切るようにイヤホンが外された。
イヤホンの打撃を横っ面に受けた隣の少年が、呆れたようにリョウを見た。

「なにィ。もぉ飽きたの?」
「飽きる以前の問題だろ」
「飽きる以前の問題でもレポートは提出しなきゃいけないんだよん? このテーマを選んだリョウの自業自得じゃーん?」
「うるせーよ」

 さらにリョウは少年の鼻先にイヤホンを振り投げる。
それを少年はリクライニングチェアの背もたれを倒すことで回避。背もたれを戻しながら少年は抗議の声を上げる。

「ちょっとぉ、ボーリョクハンターイ、なんですけどォ」
「馬鹿ミーのくせに生意気な言葉を使うなよ、馬鹿ミー」
「ミーって猫じゃないんだからさぁ、オイラにはちゃあんとミーセムっていう名前があるんだけど?」

 少年──ミーセムの言葉にリョウは肩をすくめる。それ以上の反応はない。
しかし、それにも気にした様子もなくミーセムは続ける。

「少なくともチンプなテーマでレポートに詰まるほど、馬鹿じゃないよん」
「喧嘩売ってる? 買うぞ。今とってもストレスたまってるから、買うぞ」
「えぇー、八つ当たりすんのやめてよもォ。やだなァ、リョウちゃんうっざーい」
「お前のほうがウザイ。絶対ウザイ。だから死ね」
「えぇー死にたくなァい」
「いや死ね」

 リョウは冷たく告げながら、ミーセムの額にデータスティックを投げつける。
それを片手で受け、ミーセムはロマナ特有の紫の瞳を丸くする。

「え? これ何?」
「できた」
「はやっ!」
「いやー持つべきものは自動書記のできる友達だよなぁ」

 リョウのセリフを聞いた瞬間、ミーセムから飄々とした空気が消え去った。
チェアから身を乗り出してリョウに詰寄り、制服の襟を捻り上げ始める。

「ぅおい、ちょっと近いキモイ」
「あ、の、さ? 本当にやめなって? 電子法理官科の生徒使って課題に取り組む普通科生徒なんかいないよ?」
「俺だって俺の人望が怖いよ……弱冠15歳にしてこんななら、将来どうなっちゃうんだろ」
「シーナちゃんがキミの人柄に惹かれてるようには思えないなァ!?」

 リョウの口元に意地悪い笑いが浮かぶ。

「誰もシーナとは言ってないんだけどなぁ」

 ミーセムの動きが一瞬停止する。

「……」
「ま、シーナなんだけどな」
「リョオオオオオオオオ?」
「息が生暖かいキモイ」

 さらに襟首を締め上げようとしたミーセムの耳に控えめなノック音が届く。彼が反応するよりも数秒早くリョウが席を立つ。

「どうぞ」

 やや間を空けてドアが開く。

「二人とも、ここにいたんだ?」

 姿を現したのは金髪の少年だった。色素の薄い髪や肌はロマナの身体的特徴であるが、少年の瞳の色だけはそれから外れている。
 混じりけのない、青。
原色といってもいい、真っ青な瞳孔。シティには極めて珍しい〈セト〉の遺伝子を持つ証である。

「よっレニック」
「遅かったねェ」

 二人に迎えられた少年──レニックは、柔和な面差しを苦笑させる。

「見つけるのに時間かかったからね」
「は? 端末は?」
「繋がんなかったけど……」
「──あ」

 眉根を寄せるリョウの横で、ミーセムがバックパックを漁る手を止めた。

「レニ、ゴメーンっ」
「ううん。リョウに教えてもらってたから、場所だけは。どのブースかわかんなくてちょっと困っただけ」 
「え、リョウに連絡取ればいいんじゃない? 端末あるでしょ、リョーくんだって」
「や。それ無理だから」
「はァ?」

 怪訝そうな声を出すミーセムには目をくれず、リョウは手早く荷物を整え終えていた。

「じゃあ、出るか」
「うん。あ、その前にメディアモールに行きたいんだけど……いいかな?」
「オーケイ。付き合うよ」
「ちょっちょっと、ムシ? スルー? レニまでひどくない?」
「え、だって…」
「いいから。おいてくぞ、馬鹿ミー」

 何か言おうとしたレニックの肩を抱き、リョウはブースからさっさと出て行ってしまう。
ミーセムも遅れずにバックパックを引っつかんで後を追う。ただし不満げな表情を顔に貼り付けて。

 ツールカフェを後にした三人はステーションに向かって歩き始める。
 歩き初めてまもなく、唇を尖らせたミーセムが言う。

「あーあ、嫌だなぁりょーくんのそぉいうトコ」
「てめぇは俺の気を引きたい女子か。うっぜぇ」
「ふ、ふたりともケンカはだめだよっ」
「はっはっはっ、大丈夫だって。ケンカって言うのはこういう状態のことだろ?」

 言うが早いかリョウはミーセムの方を見ることなく鋭く拳を振るった。
レニックが硬直するほどの打撃をミーセムはスウェーバックで回避。しかし、鼻先をかすった一撃にその顔は青褪めていた。

「うぇいッ!? ちょっとそんなサワヤカ笑顔で右ストレートとかやめてくんないッ!」 
「はっはっはっサワヤカだなんて照れるじゃないか」
「だ、だから」

 困惑するレニックの前でミーセムはため息をつく。足早に二人を抜き去り、つまらなそうな声が二人に届く。

「都合が悪くなったらすぐ暴力に訴えるぅ」
「ぅおいおい、DVに悩まされる恋人かよお前は」

 うんざりしたようにリョウは言うが、何か言いたげなレニックの視線に気づいて眉間にしわを寄せる。
 数秒、人通りのにぎやかなストリートを無言で三人は歩く。
 無言に堪えられなくなった、ということでもなく。レニックが口を開く。
 
「リョウ……」
「やめろ見るな。なんか俺悪いやつみたいに見えるから」
「リョウは悪くないよーん、オイラが勝手に拗ねてるだけだからさァ」
「うっわ、めんどくせぇ。何だよその気色悪いセリフ」
「ミーセムに言ってなかったんだ? 端末使えなくなったこと」

 リョウの眉間のしわが深くなり、ミーセムの目は丸くなる。振り向き、だが足は止めずに歩きながらミーセムは言っていた。

「ちょ、リョウ?」
「事実ですが何か」
「あの初耳ですが?」
「言ってねーし。使えなくなったの、今月からだし」
「えええ何で言わないの! 何で変にウォーター臭むんむんなことすんだい?」
「えー、面倒だから」

 あんぐりと口を開け、ミーセムが足を止める。

「あと、お前ルームメイトだから言いたいことは直接言えばいいかと思って」
「や、それはそうだけど、だからって非常時とかさ? 緊急連絡時とかあるっしょ?」
「あー。大丈夫だろ」
「だから、何で!?」
「俺、今年も普通学科だから」

 音には出さず、レニックとミーセムの口が同時に「え」の形になった。 

「ま、そういうこと」
「受理されなかったんだ……」
「もームリなんじゃないの?」
「ミーセム、そんな言い方」
「いーんだよ。本当のことだし」
「──って言いながらイタイイタイ痛イタタタタタッッッッ!?」

 ギリギリとミーセムの耳を捻り上げながらリョウが続ける。
 
「俺は今年もただの学生。予備兵科でも高次法理士科でももちろん電子法理官科でもなし」

 リョウが無感情な調子で告げた直後、ストリートにけたたましい警報が鳴り響いた。
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